無避妊の性交渉をなくす教育
①の無避妊の中には、「安全日」だと思っていたというものから、ムードに流されてというものまで、さまざまなケースがあります。
無避妊の性交渉は、教育によって減らすことができるでしょう。
特に、「オギノ式」は切実な避妊要求(どうしても出産できない事情)がある場合には、不適切であることを徹底していく必要があります。
月経周期のどの日にも避妊が必要という教育が必要です。
「オギノ式」の原理と効果を知識として教えるだけの性教育は、むしろ有害です。
ムードに流されてというケースでも、「安全日」の刷り込みが拒否の意志を弱めています。
結果的に「安全日」を刷り込むことになっている性情報(性教育)を克服できれば、
無避妊での性交渉は減少するでしょう。
おおらか「避妊」をなくす教育
抜去法(外出し)や射精時のみのコンドーム装着は、非常に不完全な避妊法です。
しかし、それが一種の避妊法として横行している現実があります。
切実な避妊要求(どうしても出産できない事情)がある場合には、
コンドームの装着なしのペニス挿入は絶対に避けなくてはなりません。
抜去法(外出し)や射精時のみのコンドーム装着にも、
一定の避妊効果があります。
そのため、特に男性にはおおらか「避妊」の信者が少なくありません。
おおらか「避妊」をなくすには、
教育の徹底と粘り強い教育の継続が必要です。
コンドームでの避妊失敗をなくす教育
②の避妊失敗の多くは、コンドームによる避妊失敗です。
コンドームの避妊失敗には、コンドームの破損・脱落・残留があります。
コンドームでの避妊失敗は初心者(使用1年以内)で高いとのデータがあります。
正しい装着法とスキルの習得で、コンドーム事故による避妊失敗は減らせます。
しかし、松葉杖の使い方は実際に松葉杖を使って指導できますが、
コンドームが適切に使用されているかチェックすることはできません。
ピルでの避妊失敗をなくす教育
ピルは効果の高い避妊法ですが、避妊失敗はあります。
4日に1度以上の頻度で性交渉のあるピル初心者の女性がピルだけで避妊すると、
アメリカでは100人中9人が妊娠します※。
その多くに飲み忘れが関係しています。
ピルでの避妊失敗をなくすには、
適切なユーザー教育が必要です。
教育の効果と限界
避妊についての教育は、望まない妊娠を必ず減少させます。
コンドームの避妊失敗は、適切な使用法がなされてないから生じているとも考えられます。
コンドームの適切な使用法が徹底されれば、ピルも緊急避妊も必要ないかもしれません。
しかし、いかに理想的に使用されても年間100人中2人は失敗すると、
一般には考えられています。※
さらに教育を徹底すれば、失敗はゼロに近づくかもしれません。
教育により失敗をゼロに近づけることは理想です。
私たちは理想が実現できるかどうかを誰も知りません。
私たちが知っていることは、現状ではいかなる避妊法も限界を持つということです。
セックスさせない教育
現状ではいかなる避妊法も限界を持ちます。
完璧な避妊法はありません。
望まない妊娠をなくす方法が一つあるとすれば、
セックスしないことです。
セックスしなければ妊娠しません。
セックスしないように教える教育も性教育の一つの考えです。
しかし、いかにセックスしないように教育しても、
セックスがなくなるわけではありません。
避妊法の教育を徹底すれば望まない妊娠がなくなると考えるのと同じように、
セックスさせない教育で望まない妊娠がなくなると考えるのも、
現実離れしています。
性教育が不徹底な日本だから
日本の性教育は極めて貧弱です。
貧弱な性教育のために、望まない妊娠が生じていることは事実でしょう。
避妊についての教育をしっかり行っていく必要があります。
性教育が不徹底な日本の現状を憂慮する人々がいます。
そして、そのような人々の間にある種の錯覚が生じています。
性教育を徹底しなくてはならないと考える人には、
性教育が徹底されたら望まない妊娠はなくせるのではないかとの幻想が生じます。
しかし、それは幻想です。
いかに性教育を徹底しても避妊の失敗は生じます。
女性が貧弱な性教育の犠牲になっている
日本の性教育が貧弱なことは事実です。
そして、貧弱な性知識のために意図しない妊娠が生じていることも事実です。
この状況を改善していく必要があります。
大所高所から物事を考える方々は性教育の充実が重要だと述べます。
それは正論です。
しかし、望まない妊娠が現に生じています。
そして、望まない妊娠で悲しい思いをするのは女性です。
貧弱な性教育のしわ寄せは全て女性が引き受けています。
これは公正ではありません。
性知識が乏しい女性がいます。
避妊について十分な知識を持たない女性がいます。
そして望まない妊娠をしてしまう女性がいます。
これを当事者女性の自己責任にしてしまうのは、
公正ではありません。
貧弱な性教育の責任を負うべきは社会です。
女性は性知識を求める権利があります。
そして望まない妊娠を回避するための緊急避妊にアクセスする権利があります。
教育とアクセスの優先順位
緊急避妊の市販化でアクセスを容易にするより先に、
性教育の充実を図るべきだとの考えがあります。
一見正論のようにも思えます。
しかし、それは間違いです。
教育とアクセスに優先順位はありません。
現実に妊娠の危機に直面している女性に対して、
緊急避妊へのアクセスを困難にしてよいとの考えは不当です。
現実に困っている女性がいます。
彼女に日本の性教育が充実するまで待てというのは非情です。
いつ充実するか分からない性教育を女性は待つことができません。
緊急避妊を通しての教育
学校で行う性教育だけが性教育ではありません。
性教育はさまざまな機会で行えるものです。
現在、ノルレボの処方数は10万強です。
処方時は絶好の教育の機会です。
現状でも教育は行われています。
しかし、その教育の質については検討の余地があります。
お説教も教育と言えば教育です。
通常ピルを勧めるのも教育と言えば教育です。
失敗した避妊法について失敗しない方法を教えるのも教育です。
仮に病院での処方時にベストな教育が行われているとします。
その場合でも、最大10万人強の女性に対する教育です。
緊急避妊薬を市販化し適正価格にした場合、
当初に見込める利用者数は100万人です。
100万人は避妊についての学習動機を持つ100万人です。
この100万人の女性に避妊法について解説したパンフレットを配布すれば、
大きな教育効果が期待できます。
教育が重要だからノルレボの市販薬化が必要
避妊は女性の権利です。
したがって、避妊についての知識を得ることも女性の権利です。
性についての教育は女性の権利であって、義務ではないのです。
女性が性についての知識を得てからでないとノルレボの市販薬化はすべきでないとの考えは、
性についての教育を義務と考えるものです。
女性にそのような義務を課しながら、避妊の権利を制約することはできません。
女性には避妊のアクセスも教育もどちらも必要です。
だから、ノルレボは市販薬であらねばならないのです。
※ Trussell J. Contraceptive Efficacy. In Hatcher RA, Trussell J, Nelson AL, Cates W, Kowal D, Policar M. Contraceptive Techonology: Twentieth Revised Edition. New York NY: Ardent Media, 2011.
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