2014年11月29日土曜日

レイプ被害と緊急避妊薬(市販薬化が必要な理由その6)

レイプによる妊娠中絶


平成24年度の統計によると、暴行脅迫を事由とする中絶は180件で、
暴行脅迫による中絶が全中絶に占める比率は0.092%(1万件中9.2件)でした(「衛生行政報告例」)。
しかし、中絶統計は必ずしも実態を反映していません。
秋田県の報告では、暴行脅迫による中絶は約1.33%(1万件中133件)で、
全国平均の14倍余となっています。
秋田県のレイプが全国平均の14倍も多いとは思えません。
一方、埼玉県など15県では、暴行脅迫を事由とする中絶は報告されていません。
15県では、暴行脅迫による妊娠中絶がゼロだったとは思えません。
衛生行政報告例からは、レイプによる妊娠中絶の実態は見えてきません。

レイプの実態


興味深い調査は、「男女間における暴力に関する調査」です。
この調査によると、無理矢理性交された経験のある女性は、7.2~7.3%です。
30歳代に限れば12.1%にも上ります。
無理矢理性交を強いた加害者は、全く知らない人13.8%、顔見知り程度の人13.8%、よく知っている人61.8%となっています。
無理矢理性交の被害にあった時期は、未成年の時期が32.6%を占めます。
被害を誰にも相談しなかったのは62.6%で、警察に連絡・相談したのは4.1%でした。
この調査は、無理矢理性交を強いられ妊娠するケースが相当数あることを示唆しています。


レイプに伴う緊急避妊の必要数


「犯罪白書」によると平成24年に警察が認知した強姦事件は、1240件でした。
強姦被害者が警察に届け出るケースは2%~4%と推測されています。
そうであれば、実際には年間3万件から6万件の強姦事件が起きていることになります。
この数値を基にすると、レイプによる妊娠は2400件から4800件と推測されます。
レイプによる妊娠の大部分が中絶されると考えると、
中絶統計(「衛生行政報告例」)が暴行脅迫を事由とする中絶件数を180件としているのは、余りにも実態と乖離しすぎています。
年間3万件から6万件と推測されるレイプ被害の女性が、
速やかに緊急避妊にアクセスできるようにしなければなりません。


レイプによる妊娠回避は最優先事項


レイプによる妊娠は、年間2400件から4800件と推測されます。
レイプされた上に妊娠してしまえば、女性は二重の苦しみを背負わされます。
何としても妊娠を避ける措置が必要です。
ノルレボタイプの緊急避妊薬を12時間以内に服用した場合、
妊娠率は0.5%との報告があります。
もし、レイプされた女性が12時間以内にノルレボを服用できれば、
年間2400件から4800件の妊娠を150件から300件に激減させることができます。

警察には緊急避妊薬がない


レイプ被害を警察に届け出ると、病院の診察代や緊急避妊薬の代金などが公費で支払われる制度があります。
しかし、警察に緊急避妊薬があるわけではありません。
病院を受診し支払った代金が後日還付される制度です。
緊急避妊薬のより早い、できれば12時間以内の服用をサポートする制度とは、必ずしもなっていません。


レイプ被害者にはサポートが必要


レイプ被害に遭って冷静でいられる女性はいません。
まして、レイプ被害者の約1/3は未成年の女性です。
混乱して何をしなくてはならないか、考えられなくなることも少なくありません。
レイプ被害者にはサポートが必要です。
サポートするのは、警察であってもよいし、病院であってもよいのですが、
現実に警察や病院に直行できるレイプ被害者は多くありません。
友人や家族、支援団体や学校の保健室は、
レイプ被害者の有力なサポーターです。
ノルレボが市販薬であれば、
代理で購入した家族がノルレボを被害女性に手渡すことも可能になります。
全国津々浦々の警察や学校保健室にノルレボを常備することも可能になります。

 

緊急避妊薬とレイプの関連付け言説


「レイプの被害者を救済するために緊急避妊薬は必要だ。」
そうです、その通りです。
そして多くの人が緊急避妊薬について語る時、このように語っています。
緊急避妊薬はレイプ被害者にとって、なくてはならない物です。
だから、そのように語られるのは当然のことです。
しかし、日本ほど緊急避妊薬がレイプと関連づけて語られる国はありません。
緊急避妊薬の意義はレイプを引き合いに出すと理解されやすいという事情があるにせよ、
やや違和感を感じます。
もし、レイプ被害者を本気で救済しようと思えば、
市販薬化は不可避です。
レイプに遭って12時間以内に病院に辿り着けることは、
現実的にはほぼ無理です。
今この文章を読んでいるあなたが今の時間にレイプされたら、
12時間以内に病院でノルレボの処方を受けることができるか考えてみて下さい。
現実のレイプ被害者のことを考えているのなら、
「レイプの被害者を救済するために緊急避妊薬は必要だ」とだけでなく、
「レイプの被害者を救済するために緊急避妊薬の市販薬化が必要だ」と語られるはずです。


恩恵としての緊急避妊薬


きちんと避妊すれば緊急避妊は必要ないと考える人がいます。
コンドームはきちんと使えば失敗しないと考えるのは信仰ですが、
そのような宗教を信じている人もいます。
コンドーム教です。
この宗教の信者は基本的にはピルも緊急避妊も不要と考えます。
彼らにとって、ピルは生理痛の緩和など治療目的でなら許容されます。
彼らにとって、緊急避妊はレイプによる妊娠防止に使われるのなら許されます。
生理痛に苦しむ「かわいそうな女性」に対する恩恵がピルであり、
レイプされた「かわいそうな女性」に対する恩恵が緊急避妊です。
信教は自由ですから、コンドーム教を信じること自体に問題はありません。
しかし、1つ問題があります。
コンドーム教の信者は、ピルは避妊のために必要ないと考えます。
彼らにとって、避妊のためにピルを使う女性は理解できない女性です。
2004年以来ピルの治療効果が強調されましたが、
それと同時にピルはヤリマンの薬との偏見が広まりました。
彼らにとって、避妊失敗のために緊急避妊薬を使う女性は理解できない女性です。
レイプ被害救済のための緊急避妊薬の強調は、
緊急避妊薬への偏見を広めてしまう可能性があります。
きちんと避妊していても避妊失敗はあります。
だから、ピルも緊急避妊薬も必要なのです。
ピルも緊急避妊薬も恩恵ではありません。
しっかり避妊することは女性の権利だから、
ピルも緊急避妊薬も必要なのです。
ノルレボはレイプ専用薬ではありません。


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