2014年10月27日月曜日

ピル普及の障害になる?(反対論/慎重論について)

ピルの避妊利用は減少する可能性が高い


ピルは効果の高い避妊法です。
せっかく避妊効果の高いピルがあるのに、
緊急避妊が手軽に利用できるようになるとピルが利用されなくなるのではないか、
と心配する人がいます。
この心配について検討してみましょう。
緊急避妊薬が店頭販売されるようになると、
避妊失敗後24時間以内に服用できるようになるでしょう。
24時間以内の緊急避妊なら効果率は95%になると一般には考えられていますが、
効果率87%でシミュレーションしたのが以下の表です。

緊急避妊薬によるバックアップ効果
避妊法 単独使用の
パールインデックス
ダブル
プロテクト
コンドーム 理想的な使用 2 0.25
一般的な使用 18 2.25
ピル 理想的な使用 0.3 0.0375
一般的な使用 9 1.125
※パールインデックスの数値は、Trussell J. Contraceptive Efficacy. In Hatcher RA, Trussell J, Nelson AL, Cates W, Kowal D, Policar M. Contraceptive Techonology: Twentieth Revised Edition. New York NY: Ardent Media, 2011.
※緊急避妊のバックアップは24時間以内に行うものとし、効果を87%(失敗率=妊娠率1%)として算出。

緊急避妊でバックアップすると、コンドームの理想的使用のパールインデックスは0.25、
一般的使用のパールインデックスは2.25まで低下します。
これはピル単独使用のパールインデックス0.3-9よりも低い数値です。
つまり、コンドームユーザーが緊急避妊でバックアップすれば、
ピル単独使用と同等かそれ以上の避妊効果が期待できます。
緊急避妊が手軽に利用できるようになるとピルが利用されなくなるのではないか、
という心配は的外れではなく当たっています。

「緊急避妊は避妊効果が低いので、避妊効果の高いピルで確実に避妊しましょう」
よく見かける言説ですが、それはピルの販売会社の宣伝文句であり、
実際はコンドーム+緊急避妊でピルより高い避妊効果が得られます。
製薬会社やピルの普及が自己目的の団体にとってピルの普及が目標であっても、
一般の女性にとっては緊急避妊がピル普及の障害となろうとなるまいと、
どうでもよいことです。

それでもピル


日本の現状から考えれば、コンドーム+緊急避妊は合理的な選択です。
しかし、欧米で緊急避妊の普及により、ピルの利用が減少したという事実はありません。
なぜなのでしょうか。
避妊の切実度は皆同じではありません。
それぞれのカップルの状況はそれぞれ異なります。
同棲している学生カップルもありますし、
年に数回しか会えない遠距離恋愛中のカップルもありますし、
セックスレス気味の夫婦もいるでしょう。
それぞれのカップルにベストな避妊法はあっても、
誰にでもベストな避妊法はありません。
コンドーム+緊急避妊で十分だと考えるカップルもいますが、
もっともっと確実性の高い避妊を求める女性もいます。
欧米のピルは女性の切実な避妊要求に応えるピルです。
ところが、日本のピルは切実な避妊要求に応えるピルになっていません。
医療関係者用に作られる文書が添付文書です。
ピルユーザーには、添付文書の内容をもとにした服用者向け情報提供資料が手渡されます。
両文書の内容は基本的に同じです。
その内容はより確実な避妊を求める女性の切実な気持ちを完全に裏切るものです(参照 産婦人科医の犯罪的怠慢)
ピルユーザーには、緊急避妊での対応法があることは全く伝えられていません。
上の表を見て下さい。
ピルユーザーが緊急避妊の対応を取れば、パールインデックスは0.0375-1.125まで低下させることができます。
欧米ではコンドーム+緊急避妊よりもさらに避妊効果の高いピル+緊急避妊の方法が提示されています。
だから、依然として多くのピルの利用者がいるのです。


緊急避妊薬の店頭販売がピル普及の障害になるかどうかは、
日本のピルが切実な避妊要求に応えるピルとなるかどうかにかかっています。







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