緊急避妊薬が普及すると性感染症が広がるのではないかとする考えは、
主として2つの誤解に基づいています。
1つはコンドームの使用が忌避されるのではないかという誤解です。
じかし、実際はコンドームの使用が忌避されることはなく、
むしろコンドームの使用を促進するものです。
詳しくは、コンドームを使わなくなる?(反対論/慎重論について)を参照。
2つは、緊急避妊薬の普及により、「安易なセックス」が行われるのではないかとの心配に基づきます。
しかし、緊急避妊薬の普及により「安易なセックス」が多くなることはありません。
詳しくは、安易なセックスを助長する?(反対論/慎重論について)を参照。
検査や治療の促進
無防備な性交渉の発生数に緊急避妊薬の有無が影響しないのは当然のことです。
緊急避妊薬の有無にかかわらず、コンドームの破損など無防備状態の性交渉は一定比率で生じます。
無防備な状態での性交渉では、性感染症リスクは高くなります。
つまり、緊急避妊を必要とする事態は、性感染症リスクも高い事態です。
したがって、緊急避妊薬を必要とする女性には、性感染症の検査も提案されるべきです。
市販薬化は性感染症の検査率を低めるのではないかとの懸念があります。
この点について検討してみましょう。
避妊失敗等緊急避妊を必要とする事態は、中絶数等から逆算すると少なくとも年間400万件発生しています。
その内、ノルレボの処方を受けているのは10万人強です。
その10万人強の女性全員に3週間後の性感染症検査を奨めても、
実際に受診するのはせいぜい3割です。
つまり、どんなに多めに見積もっても性感染症検査を受けるのは、400万人中3万人程度です。
性感染症検査率が低くなるのにはいくつか理由が考えられます。
1つは、ノルレボの処方を受ける女性の関心は妊娠回避に集中しています。
性感染症検査の話は耳に入りません。
2つは、ノルレボ代金が高いので、その上に性感染症検査の出費にはとても耐えられない女性がいます。
3つは、3週間後の来院は妊娠検査と性感染症検査のセットとして伝えられることが普通なので、妊娠回避が自分で確認できれば来院しない女性が少なくありません。
もし仮に、ノルレボ服用の女性全員が3週間後に性感染症検査を受けたとしても、400万人中の10万人強です。
400万人中の390万人に近い女性は、性感染症検査を検討することなく放置されています。
ノルレボが市販薬となっている国では、パッケージに服用後に生じること、なすべき事について文書が添えられています。
その文書には性感染症検査のことも必ず書かれています。
文書のアドバイスに従い冷静に行動する女性が多くいます。
ノルレボの敷居を高くしても、性感染症予防の役に立ちません。
むしろ、ノルレボの敷居を低くし、性感染症の検査と治療を広める方が、
性感染症の拡大防止に役立ちます。
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