2014年12月8日月曜日

図説 緊急避妊薬の早い服用が必要な理由

主要作用機序としての排卵遅延


緊急避妊薬は無防備な性交渉後、早い時間に服用すればするほど効果的です。
服用が24時間遅れる毎に妊娠確率は3倍にもなります(参照)。
服用時間が遅れると何故妊娠率が高くなるのか、
緊急避妊の仕組みから説明してみましょう。
緊急避妊の作用機序には諸説があります。
1つだけの作用ではなく複数の作用が関係している考える方が合理的です。
しかし、排卵の遅延(排卵時期を遅らせる)が、大きな作用機序であることに異論はありません。
排卵遅延の作用機序が服用時間とどのように関係しているのか、
見てみることにします。

緊急避妊をしなかった場合


緊急避妊をしない場合、妊娠率は約8%です。
しかし、排卵前の数日に限れば妊娠率はとても高くなります。
下の図はWilcoxの研究(Wilcox AJ, WEINBERG CR ET AL.,  Timing of sexual intercourse in relation to ovulation. Effects on the probability of conception, survival of the pregnancy, and sex of the baby. NEW ENGL J MED.333. 1517-21,1995)を基に作成したものです。
便宜上時間単位の図としましたが、元の論文では日単位なので排卵は図の0hから24hまでのどこかとなります(原著論文データ)。
この図から分かるように排卵日を含む排卵前3日間の性交渉では、
妊娠確率は30%程度となっています。
図からは精子は少なくとも6日間受精能力を保持することが示されています。
この研究では、排卵日を含む6日間に1度だけの性交渉のあった事例について調べています。
6日間でなく7日間に1度だけ性交渉のあったケースを調べると、
低い確率ながら妊娠例があるかもしれません。
(「ピルとのつきあい方」が旧版から一貫して精子の受精能力は最大7日としてきた所以です)
排卵前の期間に性交渉があれば生じる妊娠の可能性を排除するのが緊急避妊です。

(ケース1)性交渉が排卵120時間前のケース


図は排卵120時間前に性交渉のあったケースを示しています。
この時期の妊娠リスクは最も高い時期の半分程度です。
図の緑色で示したどの時点で緊急避妊薬を服用しても、妊娠は回避できます。
つまり、このケースでいえば性交渉の10時間後に服用しようが、110時間後に服用しようが、
避妊効果に影響がありません。
時間に関係なく服用することで、妊娠リスクは低下します。

 

(ケース2)性交渉が排卵後のケース


下の図は性交渉が排卵後のケースを示しています。
排卵後の性交渉では、もともと妊娠リスクがありません。
したがって、性交渉の10時間後に服用しようが、110時間後に服用しようが、
避妊効果に影響がありません。
以上2つのケースは元々妊娠リスクが比較的低いか妊娠リスクがないケースです。
このようなケースでは、早い時間の服用は必要ありません。

(ケース3)性交渉が排卵72時間前のケース


下の図は排卵72時間前の性交渉のケースを示しています。
このタイミングでの性交渉では、妊娠確率が30%にも達します。
図に緑色で示した範囲が72時間あります。
この72時間のどこかの時点で緊急避妊薬を服用すれば、
妊娠回避の可能性が高くなります。
このケースでは72時間を過ぎると排卵遅延作用は期待できません。
もし緊急避妊薬の作用機序が排卵遅延だけだとすると、
72時間を越えての服用は無効です。

(ケース4)性交渉が排卵48時間前のケース


下の図は排卵48時間前の性交渉のケースを示しています。
このタイミングでの性交渉では、妊娠確率が30%にも達します。
図に緑色で示した範囲は48時間になっています。
この48時間のどこかの時点で緊急避妊薬を服用すれば、
妊娠回避の可能性が高くなります。
このケースでは48時間を過ぎると排卵遅延作用は期待できません。
もし緊急避妊薬の作用機序が排卵遅延だけだとすると、
48時間を越えての服用は無効です。
このケースでは緊急避妊薬は72時間以内の服用で有効とは言えません。
確実に有効なのは48時間以内です。

(ケース5)性交渉が排卵24時間前のケース


下の図は排卵24時間前の性交渉のケースを示しています。
このタイミングでの性交渉では、妊娠確率が30%にも達します。
図に緑色で示した範囲は24時間になっています。
この24時間のどこかの時点で緊急避妊薬を服用すれば、
妊娠回避の可能性が高くなります。
このケースでは24時間を過ぎると排卵遅延作用は期待できません。
もし緊急避妊薬の作用機序が排卵遅延だけだとすると、
24時間を越えての服用は無効です。
このケースでは緊急避妊薬は72時間以内の服用で有効とは言えません。
確実に有効なのは24時間以内です。

以上、妊娠リスクが30%程度と高くなる3つのケースについてみてみました。
妊娠リスクが高い時期の性交渉では、許容される時間は最大で72時間です。
最大72時間であって、実際は72時間より短い時間の猶予しかありません。

 

排卵までの時間は予測できない


上で5つのケースについて検討しました。
猶予時間が120時間あるケースもあるし、72時間のケースもあるし、10時間のケースもあります。
無防備な性交渉があった時点で、何時間の猶予があるのかはだれにも分かりません。
一律に72時間の猶予があるかのような言説が流布していますが、
間違いです。
猶予時間はケースバイケースですが、個々のケースがどのケースなのか判断することはできません。
どのケースにも対応するためには、できるだけ早く服用するしかありません。
早い服用の効果は明白です。


12時間以内の服用なら、妊娠率はわずか0.5%です。
望まない妊娠を1人でも少なくしようと思うなら、
1時間でも早くアクセスできるようにしなくてはなりません。
そのためには、「緊急避妊薬ノルレボを市販薬に! 」する必要があるのです。

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