2014年11月17日月曜日

権利としての避妊意識(市販薬化が必要な理由その5)

性教育は重要です


望まない妊娠をなくすには、性教育は重要です。
このことには、だれも異論はないでしょう。
現在の日本では、避妊についての教育はなされていないか、
なされていても極めて不十分です。
性教育の充実は課題です。

知識だけでは不十分


では、正しい性知識を教えるだけで十分なのでしょうか?
答えは、NOです。
中絶を繰り返す女性がいます。
彼女の避妊についての知識は、必ずしも乏しいわけではありません。
なぜ彼女はしっかり避妊をしないのでしょうか?

大切な自尊感情


望まない妊娠をなくしていくのに、避妊の知識より大切なものがあります。
自分が好きであること、
そしてその自分を自分で守るという意志。
自尊感情とも言います。
避妊は一人で行うものではありません。
女性の自尊感情が弱ければ、知識があっても役に立ちません。

自尊感情は教えられない


きれいな言葉でいくらピルの宣伝をしてもピルは普及しません。
自分を自分で守るという意志がなければ、ピルの服用は長続きしません。
日本にないのは、女性の自尊感情をはぐくむ風土です。
それは一朝一夕にできるものではありません。
自尊感情は教えることのできないものだからです。

緊急避妊薬を通して学ぶ


自尊感情は教えることができません。
生きていく中で経験を通して学ぶものです。
避妊の失敗は自身の身体の危機です。
危機に立ち向かう行動は、自尊感情をはぐくみます。
緊急避妊薬にアクセスし妊娠を回避する行動を通して、
自分の身体を守ることの大切さに気づいていきます。

権利としての避妊


欧米では中絶は長らく禁止でした。
中絶が合法化されるのは、ピルより後の1970年代です。
中絶が禁止されていた時代の妊娠の恐怖を
現代人は想像できません。
その時代の女性達にとって、避妊はとても切実でした。
自分で自分の身体を守るという思想も避妊を権利と考える思想も、
そのような時代背景・社会背景の中で生まれました。

 

恩恵としての避妊


日本では家族計画が国策として採用されました。
避妊も中絶も与えられたものでした。
日本では中絶も避妊も権利ではなく、恩恵でした。
そして、今もやはり恩恵として意識されています。
避妊が権利でなく恩恵である時、
避妊は義務と意識されます。

エンパワーメントに役立たない


日本において避妊は義務です。
日本においてピルは恩恵です。
だから男性にお願いし、医師の指導に従うものです。
そして、緊急避妊薬の扱いもまた恩恵なのです。

避妊の徹底に貢献


緊急避妊薬の市販薬化は、恩恵としての避妊、義務としての避妊から、
権利としての避妊への転換を意味します。
避妊はプライベートな事柄です。
義務や恩恵を強調しても、徹底しにくいものです。
避妊を権利として捉え、自尊感情をはぐくむことが長い目で見れば、
避妊の徹底につながります。

自尊感情と人権意識


劣悪な境遇に置かれ苦しんでいる人々がいます。
彼らは慈善を必要としています。
しかし、慈善は彼らを救いません。
自尊感情をはぐくまない慈善は、むしろ有害なこともあります。
自尊感情と人権意識は密接な関係にあります。
避妊に関して、日本の女性全てが劣悪な環境におかれています。
私たちに必要なものは、恩恵としての緊急避妊ではありません。

 

自らを守るという意識


見方によれば、緊急避妊薬は便利なアイテムです。
見方によれば、ピルも便利なアイテムです。
緊急避妊薬やピルが単に便利なアイテムである時、
それが普及することはありません。
その利便性が負担を上回るとは限らないからです。
緊急避妊薬やピルは女性が自らを守る手段です。
女性の自らを守るという意識こそ重要です。
緊急避妊薬へのアクセスを困難にしている社会では、
自らを守るという意識は育ちません。
緊急避妊薬の市販薬化は意識の転換の第一歩です。

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